イオリンの何か

詩のような

明日死のうと考えていた男が見た夢のこと

夕方5時のチャイムが鳴った 今日もまた終わりに近づく 小さな路地裏を歩く僕を 少年の笑い声が追い越していった 「明日はきっと晴れるかな」 そんなことだけを考えていた僕らは 足元に咲く花を踏みつけながら 世界のことなんかを考えているんだ みんなが笑う渋谷のダーツバーの片隅で 僕は1人でうつむいていた みんなが涙するバラードを聴きながら 僕は1人で震えていた みんなが震える雪景色の中で 僕は君の手を握ったんだ 僕は明日死のうと考えている 「楽しい」を追いかけるのは虚しさに潰されそうになるから 「悲しい」を追い求めるのは目に見えない悲しみが怖いから 「寂しい」がなくならないのは人の優しさを知ったから 誰も泣かないB級映画のクライマックスで いつも涙が止まらなかった 誰も泣かない賑やかな雑踏の中で なぜか涙が止まらなかった 明日はきっと晴れるかな 晴れなら生きてみようかな なんてことを考えながらテレビを点けた 僕は明日死のうと考えていた
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