イオリンの何か

詩のような

Sing

あの日死にたかった少年は その思いをノートに書き殴った 鉛筆の芯が何度も折れた やがてそれは1つの詩になった そして少年は屋上から飛び降りた 学校で少年は話題になったが 3日後には授業が再開した 少年の友達がノートを見つけた 屋上の片隅に落ちていたそれが少年のものだと 彼はすぐに気がついた 彼はそれを持ち帰った 彼はそれに曲をつけた ノートに書かれた文章に導かれるように 彼は鮮烈な曲をつけた 彼は路上でそれを歌った 天国の少年に向けて歌を歌った 気づけば彼の周りには人がいた 歌う場所は路上からライブハウスへ やがて音楽事務所の一人の目に止まった 少年の歌はCDになった そのCDは全国で売られた 少年の歌は全国で流れた テレビの音楽番組の中で 通勤電車のイヤフォンの中で あの日死んでしまった少年の歌を 彼は必死に歌い続けた 少年に届けと歌い続けた いつの間にか目の前には大勢の人がいた それでも彼には少年だけだった 彼は新曲を作らなかった 彼はただ伝えたかった 少年がこの世の中にいたことを
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