小さいチームでは熱を伝えることが大事
最近、急速に「チームを作る」というところを考え始めている。必要に迫られたがためで、これまではむしろ「個」で戦おうとしていたから、チームを組織する部分についてはほとんど気にしていなかった。僕が、僕のパフォーマンスを高めるための知識やスキルを高めていたし、僕にとってのチームとは「僕が集中するための道具」でしかなかった。僕が個人戦に挑むためのサポートチームでしかなかった。
でも、それじゃ救えない人たちがいるとなった時に、「チームとして戦う団体戦」というものを考えなきゃいけなくなった。もちろん、一朝一夕で答えが出るわけじゃないけれど、色々考えて、そして書き残すというのが僕のやり方なので今の考えを書き連ねていく。
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チームを組織するとして、僕が一番欲しいのは、「イオリンさんの仕事だったら一緒にやってみたい」と思ってくれるような人であり、逆に言えば、僕自身がそう思われるような人である必要がある。今の僕にそんな魅力はないので、頑張らないといけない。
先日、上司からは「イオリンさんを会社のみんなが頼っている。その空気感を作れることが素晴らしい」といった評価をいただいたのですが。これは「イオリンさんがいれば安心」という段階で、それ自体とても嬉しい、ありがたいことだけれども。
良いチームを作るなら「イオリンさんと一緒に仕事したい」とか「イオリンさんがやろうとしていることに参加したい」というところまで持ってこないといけない。それはスポーツチームとか映画制作チームとかと同じで、ある種惚れさせる、仲良くなってもらう必要がある。
僕自身が今、そういったことを思わせる魅力・能力が伴っていないので、ここは僕の直近の課題だと思う。
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僕の観測範囲では、エンジニア界隈においてそもそもそんな風な文化がほとんどないように思う。
少し前の「やりがい搾取」みたいな単語もあって、今のエンジニア界隈での仕事の基準は「待遇」というのがかなり大きな割合を占めているように思う。給料や福利厚生、キャリアパスや教育制度などなど。
もちろんそれが悪いわけじゃない。むしろ全然良いと思う。みんな自分の人生があるんだから、ちゃんとその人生を楽しく生きられるための条件を気にするのは至極真っ当だと思う。仕事以上に大切なモノがあるならそっちに行くのがイチバンだ。
でも、良いチームを作るには「熱」というか、「火種」が欲しい。
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良い仕事をするには一生懸命がんばるってことが必要で、そのための爆発力を持つためには「やりたい」って熱は必要だと思う。
実際、僕は今一人で熱を宿している段階なんだけれど、その熱のおかげで仕事の成果の物量は間違いなく上がっている。「みんなが助かるならちょっと無理をしよう」と思って踏ん張って出している成果は決して無視できない。チーム全体がそういったちょっとした頑張りを積むことで圧倒的な成果というのがきっと生まれるんだろう。
これは「待遇はおざなりで良い」というわけじゃない。先ほども言ったように給料や待遇は「燃料」だ。これがないと燃やすものがない。僕自身、ありがたいことに良い待遇をいただいているからこそ、遠慮なく火力を出せる。
一方で、燃料の豊富さばかりに固執していると「火種がない」ということになりかねない。燃料が枯渇する心配はなくても燃え上がらない仕事というのは味気ないモノだろうと僕は思うし、ここ一番の粘り強さは出ないと思う。
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ただ、そういった火種を持ってもらうためには、いわゆる一般的な「採用活動」ってやつはあまり向かない気もしている。アレはむしろ大企業のような「火種がない人でも動かせる人数の足しに雇えればいい」みたいな雇い方に見える。
ある一定以上の規模のある組織や「とにかく人数が足りないから補いたい」といった欲求なら問題ないと思う。あるいは任天堂みたいな社会的魅力のある人・企業なら熱を持った応募者が来る可能性が高いから、火種を育てる必要もあんまりない。
でも僕はそんな魅力はないし所属している組織も正直まだまだ社会的に魅力あふれるとは言えない。そんな僕がただ採用サービスに登録したりエージェント経由で紹介してもらったり・・・みたいな方法で良い人を採用するのはとても難しいんじゃないかと思える。
どっちかと言うと「このサービスを作った人のもとに飲みに行こう!」みたいなことのほうが効果的な気もする。あるいは友人に声をかけたりとかね(これは友人の人生背負いたくないからアレだけど)。
ただ、こういう熱を伝播させてスカウトみたいなやり口は現代社会の雇用体系とも合っていないように思うから難しい。そもそもこの話自体、「会社の雇用」より「イオリンのチーム構成」の話だから僕が起業でもしない限り実現が難しいようにも思う。
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ちなみにイオリンは会社内の会話でも「あの人とあの人は飲みにいったらいいのに」という発言をする。これは人足も仕組みも足りないような小さいチームが機能するためには熱が必要であり、そういった熱が伝播するには飲み会で腹割って話すのが一番手っ取り早いからだ。
もちろん、熱量をちゃんと仕事の成果にするための仕組みや段取りはいるんだけれど、みんなその仕組みや段取りだけでやっていこうとする。1人でやり切れる人間ならそれでいいんだけれど、誰かの力を借りるなら、まずその鍵となる人間にも火種を宿さないといけない。
ここは多分ループする話かなと思うんだけれど、今は人より仕組みの比重が大きい時代で、「属人性をなくして仕組みでカバーしよう」という概念をよく見かける。これはこれで正しいんだけど、「強すぎる個はそのまま個で戦わせた方が強い」という論理にどこかで負けて、「強い個をツモって無双させよう」という人に比重を置いた時代がまた来るんだと思う。
これはつまるところ仕組みが強い場面と人が強い場面があるというハナシで、僕がいるような小さなチーム・小さな組織では間違いなく人が強い。
多分、大きい組織から来た方が苦戦するのもここかなあと思っていて、仕組みベースの戦場で戦ってきた人間が、強個体ベースの戦場に来て強個体の仕事の代替にはなれなくって。一方で強個体の方も「仕組み化しなきゃ」と思っちゃってるから解決策が出てこない。仕組みよりも先に熱を伝えて強個体に育てる必要があって、そのためには「酒飲み話」が有力なんだけど、その思考がない。
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もちろん、僕は「全員が熱を持て」とは言わない。さっきも書いたけれど仕事以外に大事なモノを持っているならソッチを大事にするのが大正解だと思う。
どちらかと言うと僕が今持つ火種は、「仕事以外に大切なモノがある人たちが、仕事で大変な目にあっているのを見過ごせない」みたいなことに近い。あわよくばワクワクしてほしいけれど、それは彼ら自身が熱を持つというより、僕が発する熱で暖まってくれるといいな、みたいな感覚だ。
ただ、そんな人たちを暖めるためにも、僕は熱を発していたいし僕のチームには熱を持って取り組んでもらえるような人を揃えたい。
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こんなことを書いておきながら、少し前まで、ほんの数週間前まで僕の熱はそんなに強くなかった。これまでの僕の火種は「ただ自分の人生を静かに暮らしたい」であって、そのために苦慮していたにすぎなかった。だから、ある種仕事でうまくいくかどうかは「僕が自分の人生に時間を賭けられているかどうか」「僕がやりたいと思う仕事ができているかどうか」だった。
でも、少し前に「僕がもっと頑張らないと不幸になっちゃう人がいる」「僕がもっともっと頑張ることでこの人たちが楽になるかもしれない」と思った時に火種が1つ増えて、爆発的に燃え広がった。
なるほど他者に向けた火種は強いんだな、と怖さも感じるし、熱を持つということの危うさももちろん感じるけれど。せっかく手に入れたこの火種をしばらく信じてみたいとも思う。うまく熱を力にできる機関を構築していきつつ。今は多分ちょっと火が漏れすぎている。