テクノロジーは引き算で
ここ最近のテクノロジーの進化といえば、やっぱり生成AIだろう。人にはよるだろうけど多くの人たちの生活にしっかり入ってきている。いわゆるガジェット好きだけではなく、作家さんからOLさんまでChatGPTを使っている人がいるし、話題にあげて伝わらないことはほとんどない。
じゃあこのテクノロジーは僕らにどういう影響を与えるのか。良いことばっかりのように見えるけれど、反面、雲行きが怪しくなる気配もある。ひとつは、「僕らの仕事はいよいよ無限大に膨らんでしまう」ということだ。
僕らを便利にするテクノロジーは、登場当初は「僕らの仕事を減らしてくれるよ」という触れ込みでやってくる。生成AIだって「多くの仕事がいらなくなるよ!」と言ってきたし、実際、不要になる仕事もある。でも忙しさで言えば、画期的なテクノロジーがやってくるごとに僕らは忙しくなっている。正確には「忙しい」と感じやすくなっている。
ひとつは、テクノロジーによって起きる「たし算」に目が行ってしまうからじゃないかな、と思う。いつでも連絡できるから、昼夜問わずとも緊急連絡ができるよ、とか。印刷しなくてもディスプレイで読めるから、文書を大量に生産できるぞ、とか。デバイスが持ち歩けるから、ランチ休憩中もお仕事できるぞ、とか。いつでも会議できるぞ、とかもそうだ。
そういうたし算は簡単だから手を出したくなるけれど、実際みんなが助かるようなたし算ってのはあんまないのよ。それよりも引き算。文章の世界でもクリエイティブの世界でも、「これ以上、引けるものがない!」っていう時が完成形だからね。まず何が引き算できるか、だよ。
37signalsのJason Friedさんは、「会議とかで仕事時間が細切れになってて集中できない」という悩みに対する特効薬として「Cancel the meeting.」と答えていた。それで回らなくなるんだったら復活させればいい、と。僕もそう思う。リモート会議のいいところを、「いつでも会議ができる」というたし算で考えるから際限なく増える。そうじゃなく、「会議のための準備が不要になる」という引き算で考える。そうすると仕事が減るでしょう。
そうやってできた時間でコーヒーや紅茶を楽しめばいいのさ。それがテクノロジーの良いところさ。