イオリンの手紙

瓶詰めの紙切れ

「絶対に治してやる」

百英雄伝というゲームの中にお医者さんがいてさ。そのお医者さんがね、仲間になる時にこんなことを言ってくれるんだ。 「いいか、必ず生きて帰ってこい。命を粗末にしたら絶対に許さないからな。生きてさえいれば、僕が絶対に治してやる。それが僕の仕事だからな。」 この仕事に対する考え方がすごい良いなあと思って記憶に残っている。特に「絶対に治してやる。それが仕事だから」と言い切る部分。この言葉だけですごい信頼できるし、プロの職人として仕事をするなら、このくらいは言い切って欲しいよねえ、と僕は思うわけだ。 もちろん、彼にも治せない怪我や病気はあるはずだ。特にこのゲームは英雄譚だから、戦争がある。彼のもとに、絶対に治すことができない患者や怪我人が運ばれることは十分ありえるだろうし、実際にそんな過去もあったと思う。それでもなお、彼は「絶対に治してやる」と言い切る。それが彼の仕事だから。 たとえばここで、「いやぁ全部治せるかはわかんないけど、最善は尽くすよ」って言われたら、あんまり自組織の医療を任せたくはないよね。実際にはこっちのほうが正確な職務なんだよ。冒頭の彼も、実際にやることは「最善を尽くす」なんだよ。でも、彼はそうじゃなくて「絶対に治す」と言い切る。そこに彼の自負があるし、そんくらい言ってくれれば「よし、任せよう」という気持ちになるよね。 それに、「命を粗末にしたら許さない」と言い切っているところもいいね。彼自身の信念でもあると同時に「それをされたら仕事ができねえよ」っていう所信表明でもある。プロフェッショナルってこういうことだよなあ、なんて思った。職務とは違う。 思えばゲームクリエイターの桜井政博さんも「届けられた課題には即座に判断するようにしている」というのと同時に「そのためには、洗いざらい情報を伝えて欲しい」という要求もしていたね。
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