イオリンの手紙

瓶詰めの紙切れ

前のめりになってくれるお客さんを

「日本の料理人さんがどんどん海外に出ていっている」というハナシを聞いた。そう聞くとつい「海外のほうがお金があるから」というハナシをしてしまいがちだけど、そうじゃないそうだ。 その方曰く、海外のお客さんのほうが、お客さんが前のめりで、お寿司ひとつにしても米のことやお魚のことを勉強した上で食べにきてくれるし、そういうお店を設計しやすいからだそうだ。日本人相手だとそういうお客さんはとても少ない。せいぜい写真撮ってインスタに載せて、といったお店になってしまう、と。 つまりは「自分たちのやっているお仕事に前のめりな人たちを相手に商売がしたい」というハナシで、これは料理人に限らないハナシだよなあ。自分が研鑽を積んできた仕事道具やそれを使って提供する商品は、それを前のめりに味わってくれる人に提供したいよなあ。主語が大きな話題をしたくはないけれど、ビデオゲームの世界において「日本人のレビューは辛口で全然褒めてくれない」「だから海外作品を日本語に翻訳するゲームが減っている」というハナシも聞く。 消費者としては、やっぱり提供してくれていることには素直に敬意を払い、感謝をしたほうがいいよな。それが舌に合わないこととは別でさ。そうしないと作ってくれる人たちはいなくなっちゃうよね。厳しく言うのは身内や同業で十分だよ。 敬意を持って接しているとサービスが良くなることだって大いにあるしね。料理人さんも「真剣に楽しみにしてるお客さんのために、朝早く仕入れがんばろう」って思うようになる。きっとそういうものだよねえ、商売というものは。
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