イオリンの手紙

瓶詰めの紙切れ

文化の醸成

最近、会社で小さな小さな実験をしている。会社ではSlackというチャットツールを使っているんだけれど、そこでひっそり勝手に、仕事とは直接関係しないチャンネルを作り、それをひとりで運営している。 きっかけは、#musicチャンネルを発見した時だ。もう5年以上前にアーカイブされていたチャンネルを偶然発見してさ。それを掘り起こしてひとりで勝手に、毎日音楽のURLを投稿するようにしていた。そうするとある時、新入社員のひとりが気付いて参加してきて。僕が毎日投稿する音楽に対してたまにemojiを残す、といった感じが数ヶ月続いた。 そうしてまたひとり、またひとりと入ってきて、ぽつぽつと音楽のURLを落として行くようになってきた。僕は変わらず毎日、何もコメントを残さずただURLだけを置いている。入ってきた方々も僕に倣ってか、変に長々と音楽を語るようなことはせず、ただDJステーションのように音楽と、コメントをせいぜい一行だけ残していく。最近はたまにemoji以外にも少し会話が生まれているけれど、それでも基本コンテンツは「URLとコメント一行くらい」で保たれている。 これは何の実験かというと、場づくり、文化づくりの実験だ。最初に「誰でも音楽URLと一言コメントくらいを落とせる場所をつくりたいなあ」と思ってね。でも、特定個人の色や特定ジャンルだけが目立つのは避けたいなあ、とか、音楽の議論とかは要らないなあ、とかあってさ。ラジオくらいの位置づけがよくって。でもそれを強制するのも堅苦しいでしょう。 だからひっそりと場所を作って、そこで僕がひとりで始めたの。そして僕が続けることで文化を作れないかな、と。何も語らず、何も論じず、ただ音楽だけがひたすらに落とされていく。そして、どこかで宣伝するでもなく、気付いた人が、「いいねぇ」となった人が入ってくるだけの場所がちょうどいいなあ、と思ってそうしている。「音楽チャンネルがあるよ」と全体に喧伝するのも押しつけがましいし、場づくりとしては下手だなと思って。そこまで音楽オタクじゃない人でも味わえるような場所にしたくて。 僕自身、ノージャンルでクラシックからシティポップ、無国籍音楽まで聞くし、1970年代から2025年の音楽まで幅広く聞くから、そうやってジャンルをバラしながら続けていて、今まぁ数人レベルだけれどそれは保たれていて。文化ってこうやってできあがっていくよなあ、というのが見られて嬉しい。
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