でっかい川のはなし
例えば目の前にデッカイ川があってさ。向こう側に渡って薬を届けなきゃいけないって時にさ。さぁどう渡ろうと考えてみんなで集まって。「舟がいるんじゃねえか」ってハナシになって、で、舟を作れる人を雇って、川の流れとかを気にしながら一生懸命に舟を設計して木材組み上げて舟とオールを作って、漕ぎ手も雇って、川の流れが穏やかな日を選んで舟を漕いで。そうして無事、薬を届けられましたとさ。みんなで「やったねーー」って言って、お薬の代金をいただいて、その中から舟の設計士さんや船大工さん、あるいは漕ぎ手さんにお駄賃渡して。
僕はこういう時に、「え、大声で向こう岸の人呼んで、薬投げたら良くない?袋に薬と重しになる石をいれたら届くでしょ?」みたいなことを思う。そうすれば人を雇うコストも、舟を作る時間も節約できるから、より安くお薬を届けられるよ、そっちのほうがお客さん嬉しいよ、って。
でも、「市場」という考えを持ち込むと、大勢を巻き込んだ方が「市場がデカい」んだよね。「1000円をいただいて、お薬代に300円、向こう岸でお薬拾ってくれた人に200円払って、残りの500円もらう」よりも「1万円いただいて、舟の設計士に4000円、舟をつくってくれた人に4000円、舟を漕いでくれた人に1200円、お薬代に300円、自分が500円もらう」のほうが、市場がデカいのさ。だから市場においては「舟を造る力学」を拒否しづらい。
まぁこれはかなり単純化してるハナシだけど、こういったことがゆえにいろんなモノが歪んでいる気がしていて。その一つが「向こう岸でお薬拾ってくれた人」の給料が、やたらと安いこと。その人のほうが「お薬を安く届ける」という点で、ものすごく価値を生んでいるのにね。