イオリンの手紙

瓶詰めの紙切れ

もっと遊ぼう

昨晩、ある友人と話した。その友人はこの秋終わりに僕のチームに入ってくる。僕が勧誘したのだけれど、無事会社の選考を通って、僕のチームに見習いとして入ることが決定した。 彼とは8年くらいの付き合い。当時、僕はフリーランスをやっていて、その中で契約していた働き先で後輩バイトとして入ってきた大学生が彼だった。それがあれよあれよと、今に至るまで関係性が続き、ついにはまた同じチームを組むことになった、というのは興味深いなと思いつつ、自然なだな、と思う。全く見知らぬ誰かを面接して受け入れるよりもずっと自然。 さてもそんな彼が、「ちょっとイオリンの仕事ぶりが見たいから、働いているところを見せて」と言って、10月頭に僕の家に来ることになった。ただ、僕は「僕が机の前でパソコン叩いている姿見ても仕方ないんじゃないか」というハナシをした。「そんなところで僕は仕事していないよ」と。それよりも僕が休日どうやって過ごしているか、とか、旅先でどう過ごしているのか、といったところでこそ、僕はある種一番仕事しているよ、と。 たとえば去年の頭に阿智村の旅館に泊まった時、僕はその旅館の壁にあった観光説明パネルを読んでいた。阿智村は星空だけでなく、綺麗な花桃が咲き誇る里でもある。その花桃は、ある村人が旅先で見た花桃を「これが阿智の村にも咲いてるとええなあ」と植えはじめたのだそうだ。そうやってコツコツ植え始めたものが評判を呼んで植える人が増え、今では村全体で支えるようになった。今はご老体となったその方は咲き誇る花桃を見て、「面白かった。本当に面白かったなあ。20年くらい楽しませてもらったなあ」と言っている。 こういうところだよ、僕が一番仕事をしているのは、と。パソコンを叩いている時間はただの結果発表に過ぎないから。それよりも普段の生活においてさまざまなことをおろそかにせずに受け止めているか、ということ。だから10月にウチに来たときは、もっと遊ぼうよ、と。そんなハナシをした。
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