イオリンの手紙

瓶詰めの紙切れ

自然発生的な会話

先日、ツアーで行った尾瀬の長蔵小屋は、山小屋の中ではとても綺麗で、ちょっとした旅館を思わせるくらいの素晴らしいモノだ。その中には談話室みたいな空間があってね。僕は朝食後のコーヒーやちょっとした休憩の時にお茶をいただいたりした。そこには他のツアー客もちらほらいたのだけれど、そこでの会話が結構記憶に残っている。 会話内容もそうだけれど、こう、会話の発生がすごい自然的というか。ふとコーヒーやお茶を淹れて机に座ってポーッとして。そしたら「雨、降ってきましたねーー」「そうですねーー朝はまだでしたけどねー」みたいな会話のはじまり。あるいはコーヒーを飲んでいたら、「あら、いいわね、どこでいただけるの?」「あちらでー。おいしいですよぉーー」みたいな。きっと飛鳥時代とかからこうやって人は会話を始めたんじゃないかな、と思うような。 そういう会話の始まり、ってここ最近なかったなぁ、と。もともとこういう会話をするほうでもなかったけど、する場もないよな。オフィスだって基本、パソコンに向かって仕事をしているから「お邪魔してすいませんね」みたいな力学が乗っかるし、ちょっと違うよなあ。もちろん、オフィスでの会話とか飲み会での会話とかも楽しいんだけれどね。一方で何の力学もなくフワッと始まる会話って、ちょっと久しいなあ、って。 家族と暮らしている方はもしかしたら、こういう会話をしているのかもしれないね。僕は最近はもう、そういう家族と暮らすだとかいったことはイメージできなくなっていたけれど、ああいう自然発生的な会話を楽しめるなら、それはいいのかもね。
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