イオリンの手紙

瓶詰めの紙切れ

「嬉しい」と向き合う

そういえば尾瀬の長蔵小屋にいる間に同行者の方々と雑談していたのですが。元調理師さんだとか、元ツアーガイドさんだとかがいて、そういう方々の長所は山小屋とかでもむっちゃ活きますよねえというハナシになってね。一方、僕は接客業は未経験で、日々の仕事はエンジニア兼ディレクターのような人間。そんな僕は何かできることあるんですかねえ、という話題になった時、ある方が「山小屋の宿泊予約とかのシステムって実は全然整ってないんですよ」と話し始めた。 曰く、それぞれの山小屋が別々の管理システムを使っていて、それらが全然統一されていないのだそう。場所によっては電話の予約しか受け付けていない場所なんてのもある。でもそれは各山小屋が細かいところで違うニーズを持っていて、各々がそのニーズに合わせたシステムを導入しているからだそうだ。電話しか受け付けていないのも、「電話で話をして、体調とか装備とか、あるいは保険のこととかをちゃんと聞き取って、その話し振りで登山者の不安を汲み取って最適なサービスを提供したい」という想いがある、と。 とは言っても統一されていないから、山小屋間の連携が取りづらいそうだ。ある小屋で予約をとった宿泊者が全然来なくて色々捜索とか出したけど、実は違う山小屋に辿り着いていた、とか。あるいは登山歴や保険情報を宿泊システムで見られるようにするとかね。統一されたシステムがあることで随分とできることが増えるんだけれど、と。 確かにこの問題には、僕ができることはある。システムを作るというところもそうだし、なんだったら山小屋を渡り歩いて話を聞いて回って——みたいなことも全然できるなあ、と感じた。いや、普段仕事でやっていることも大枠はそうかもしれないね。 別に今すぐどうこうとか、そういうハナシではないのだけれどさ。自分が生涯現役でいることを考えた場合、どこかで「最先端」とか「ハイテク」とかからは離れることになると思う。その先で、今書いたようなことができればいいなあ、とふと思った。別に最先端でもハイテクでもない。でも「欲しい」「嬉しい」「楽しい」をプラスすることに向き合える。そんな生活ができれば、生涯現役いけそうだ。
前へ
一覧
後へ