毎日、布団を畳み、机を拭く
尾瀬の山小屋で習ってから、僕はいまでも布団の畳み方を意識している。それまではつい、敷布団と掛け布団をまとめて三つ折りにして、そのまま置いていたけれど。今はちゃんとわけて、それぞれを一回広げて持って、そして畳むようにしている。置くときも、畳んだそれぞれの布団の幅が揃うように意識してね。
三つ折りにする畳み方も、それはそれで意識してやっていた。きっかけはたしか映画「サマーウォーズ」だったと思う。その中で何気なく、主人公が田舎の古民家で起きて、布団を畳むシーンがあって。それが「布団を三つ折りにして、食卓に向かう」だった。それが、なんかいいなぁ、と思って僕もやるようになった。その前は、どうしていたかな。
きっと僕にとって大事なのはこういうこと、その一つ一つなんだと思う。仕事中の息抜きにも小さな掃除をするようになった。軽い拭き掃除や、散らばっている紙の整理とか。気付いたら、とっ散らかっていた机の上が随分とスッキリするようになった。
こういうことが日々の「生」を「生活」にし、そしてそれは仕事にも活きるよな。逆にこういった「活きる」を含ませないと仕事も単なる作業になってしまう。そしてそれは、間違いなく仕事の質を下げるよ。
神木隆之介さんが、「ぼくらはときどき、しんどくなることが誠意であるような勘違いを起こしてしまうんです」と語っていた。自分を追い込んだり、大変な目にあうことが誠意ある演技だと思いそうになるけれど、それは必ずしも、お客さんに伝わることには繋がらない。それは誠意ではない、と。
似たようなハナシで、僕もつい追い込みそうになるけれど、それは誠意ではないんだな。ちゃんと布団を畳む。机を拭く。朝日や夕日で一喜一憂する。よく眠る。そういう生活をきちんと送ることさ。きっとね。「多忙は怠惰の隠れ蓑」とはよく言ったものだなあ。