イオリンの手紙

瓶詰めの紙切れ

おもしろがって、歩く

僕はよく歩く。歩きながら思いつくことも色々ある。でも、それは「よし、思いつくために歩くぞ!」と思っていてはいけないんだな。そういう時は大抵、何も思いつかない。机の前にいて、煮詰まって、「よし、歩きながら考えるか」と思っていると、あんまり考えが進まないことが多い。気分がスッキリは、するのだけどね。 「歩きながら考えている」のではなく、「歩くのをおもしろがっている」のが近いね。二宮金次郎みたいに歩いているんじゃないんだよ。おもしろくて、つい歩いちゃう。「こんなとこに、こんなものがあるんだ」とか、「これはなんだろう」とか、そういうのをおもしろがりながら歩いてる。で、そういう時に、色々思いつくんだよ。思考が伸び伸びしているんだろうな。 こういうのは実際、歩いてみないと分からないことでもあると思う。「歩くのいいですよぉ」とか「歩くとよくアイデアが出てくるんですよぉ」って言っても、「考える人」みたいな顔で歩いているように思えちゃうでしょう。でもそうじゃなくって、「おお、あそこに大きな鳥がいるぞ」とか、「こんなとこに古い薬局が」とか、そういう一つ一つをおもしろがっている。 こういう「おもしろがる」というのは、実のところ何をやっていてもそうなんだけれど、一番色濃く輪郭が出てくるのが「歩く」じゃないかあね。
前へ
一覧
後へ