魔法の言葉「IF」
「もしXXだったら」っていうのは、いろんな物事を始める時の、スタートラインだよねえ。お仕事だってそうだし、子育てだってそうでしょう。「もしお子さんなら」っていうのは考えるじゃない。
演劇業界の名著の中に「魔法の言葉IF」っていうハナシがあるそうだ。これは、何かの配役があった際に「もしあなたがその役だったらどうしますか」ということを考えましょう、というハナシ。いろんな演技のテクニックはあるけれど、それよりも先に「もしあなたがXXだったら」のIFはすごい重要なんですよ、と。
これはほんと、全部に言えるよね。すごく当たり前のハナシなんだけれど、誰かに手紙を書くときだってそうするだろうし、コンビニで商品をレジの方に渡す時とかもそうでさ。「もし僕がレジの人だったら、バーコードのある面を見せて出してくれたら、うれしいなあ」とか。それは全てのスタートラインだよね。
あるいは、別に人間じゃなくてもいいでしょ。もし僕があの鳩だったら、人間が近づいてこないほうが嬉しいなあ、とか。あるいはお布団やソファだって、もし僕がソファなら、くつろいでリラックスしてくれたら嬉しいなあ、手入れをしてくれたら嬉しいなあ。そうでしょう。
でも、まぁ慣れてきたり育ってきたりすると、すっぽ抜けやすいよね。「手を尽くしたこと」「工夫したこと」のほうにフォーカス行きやすいよね。大衆的にも、そっちのほうがウケがいいからね。「レジの人にありがとうを伝えましょう」みたいな。でも、その手前の「もし私がレジの人だったら、何が嬉しいかな」と考えることのほうが、肝要でしょう。
思えば僕は昔からそうだった。昔、母は郵便ポストに入った要らないチラシをちぎって捨てていた。それはかさばらないための素敵な工夫なんだけれど、僕はチラシに感情移入して「折り畳んで捨ててあげたかったなあ」なんて思っていた。
これは共感性ではない何かだね。「IF」という魔法を昔から持っていたんだね。