世界は広い
高速バスでイヤホン、特にノイズキャンセリングイヤホンを着けていると乗り物酔いしやすいことに気付いてから、僕は高速バス内ではもっぱら、読み物をしては外を眺めて過ごしている。存外、外を眺めながら過ごす高速バスの空気感は心地良い。
おおよそ長野から東京にかけては自然の山の間を進んでいくから、山であったり谷であったりが目に入る。その合間には人間の街や集落があって、「こんなとこにも人が住んでいるんだなあ」と気付ける。標高も高いものだから、雲が地面とぶつかってちぎれている様とかも堪能できる。
僕が住んでいるところから新宿まではおおよそ3時間半かかるんだけど、そのうちの2時間半くらいはそういう自然が豊かな土地を走っている。関東平野に入る直前までは、山の間を縫って、あるいは貫いて走るのだ。
それが関東平野を囲む山を抜けて八王子に入った途端に、あたりにコンクリートが広がる。僕は毎回そこで、ちょっとした別世界に入ったような感覚になる。さっきまでは木々が豊かだったのに、気付いたら灰色の世界になっていて、大量の人間の住居がひしめいているのだ。何度見ても「すごいな・・・」と言葉が漏れそうになる。
逆に言えば「灰色の世界」なんてそのくらいの狭さなのだ。あまりにも大勢の人が住んでいて、おまけに山で囲まれているせいで気付けないが、「TOKYO」はこの島国のあくまで一要素でしかない。
そういう風なことが現実味を帯びて話せるから、長野に住んで良かったな、と思う。生活圏や移動範囲を広げることは、そのまま世界の広さを知ることになる。こんな島国を1時間ちょい移動しただけで、世界は変わるんだから。