どちらも彼だった。
高校時代、ある仲の良い友人がいた。彼はとても自信に満ち溢れていた。高校3年生の頃に仲良くなったのだが、彼は自分が優秀ということに疑いを持っていなかった。当時、僕は勉強が苦手だったから受験勉強に全く身が入っていなかったのだが、彼とゲーム感覚で競い合うことで、ある程度、受験に役立つ勉強できるようになった。
その彼は、将来は家庭を持ち、お子さんをいただきたいと言っていた。2人か3人か忘れたが、僕はその頃から「子どもはいいかな」などと思っていたので、その理由を聞いてみた。すると彼は不遜にもこう言った。「俺ほどの人間の遺伝子は残さんとアカンやろ。」この言葉は今でも覚えている。
さても各々が別の大学に行き、疎遠になって数年経ってから、何かしがのきっかけで再会することになった。確か社会人2年目とかそのあたりだったと思う。久しぶりに会う彼は幾程の人物と成ったのかな、と思って会った。
そこには立派に仕事をこなす彼がいたが、驚くことに高校時代の頃にあったような満ち溢れる自信は鳴りを潜めていた。「おいおいどないした。自分の遺伝子は残すべき、とか言うてたやんか」と発破をかけても「そんなこと言ってたっけ?まあ今はそうは思わんよ」などと返したのだ。まあ、自信を喪失したわけでもなく、人並みくらいの自信に落ち着いた、ということだ。
さて、どちらが本当の彼だったろうか。僕はまあ、両方が彼であったと思うし、どちらの要素も併存しているのではないかな、と思う。若気の至りといえど、それは消えてなくなるのではなく顕現しなくなっているだけでね。時間は人を変えるというけれど、時間ってのも一方向じゃない。