手続きの文化
日本にはさまざまな文化的特徴があるが、その大きな一要素が「手続きの文化」だ。日本人は手続きやお作法といったものを、時にその内容や結果よりも重視する文化だ。
神仏を信奉していなくても神社や仏閣に参り、鳥居の前ではお辞儀をする。食事の前には手を合わせて「いただきます」と宣言する。靴を脱いだら揃える。あらゆる日本武道には型や流儀という名の手続きが存在する。和歌も能も生花も茶の湯も、手続きこそが肝要な文化だ。世界に日本だけとは言わないが、少なくとも日本を日本たらしめる要因の一つだと思う。
仏教的と言ってもいいかもしれない。仏教にはまあいろんな教えがあるが、割と「手続きをやっているうちに幸せになってるもんだ」みたいなノリで手続きが組まれているものも多い。般若心経とか南無阿弥陀仏とかを意味もわからず唱えているのはそういうことだ。それは意味がないわけではなく、「手続きがすべて」と言える。そういう文化なのだ。
大災害の後でも日本人はちゃんと列に並ぶ、といった美談があるが、あれも「手続き」を重んじるからだと思う。別に優しいとか思いやりがあるとかじゃなくて、「買い物する時は列に並んで順番を守る」という手続きが大事なのだ。
もちろんそれが現代日本人の全員に当てはまるなんてことはないし、まあ薄れていっていることではあるだろうけれど。でも、日本という舞台装置はそういう「手続きの文化」が染み付いているわけで、そこで何十年も暮らしている人にも「手続きの文化」は大なり小なり染み付いていると思う。